7割の企業が市場評価改善できず:市場評価改善の困難とは
- htsujii
- 7月22日
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更新日:7月24日
前回までのブログでは、自社株式の市場評価を定量的に行い、評価指標の月次評価を向上させる事で、市場評価を改善できる事をご紹介しました。同施策により市場評価の改善が効率的に実現する事が期待されますが、今回は現在一般的なアプローチでの、市場評価の改善の困難さを確認したいと思います。
これまでと同じデータセットを用いて、過去6ヶ月間における当手法の市場評価尺度に基づき、評価改善の状況を分析しました(図1)。その結果、評価が向上した企業の割合はオレンジ色の領域が示す23%、変化がなかった企業は緑色の領域が示す45%、評価が下落した企業は青色の領域が示す32%という結果でした。つまり、約7割以上の企業で市場評価が改善されておらず、IR活動に取り組むも不満の残る結果となっている事が伺えます。

次に、6ヶ月間の評価の変遷を詳しく見るため、期末時点の評価区分(1が最高、6が最低)ごとに、期初時点での評価構成を示したものが図2です。例えば期末評価が1の区分では、その51%の企業が6ヶ月前も評価1だった事を表します。
評価1・2の上位群では、約8割が6ヶ月前も同様の評価を得ており、評価5・6の下位群も同様に約6割が以前から同じ評価でした。つまり上位下位の評価区分では、評価の急激な変動は少なく、評価は安定しやすい傾向にあります。評価3・4の中位群では、以前上位に位置していた企業が約4割存在する一方、下位から中位へ転じた企業は相対的に少なく、評価の悪化は改善より頻繁に起こる事が示唆される様です。

さらに、評価の定着度を示すために、6ヶ月間で同じ評価が何回繰り返されたかを図3に示しました。繰り返し回数を3区分し、期末の評価区分毎に構成比を示しています。例えば評価1の区分ではその51%の構成企業が評価1を4回以上得た事を表します。
評価1、2、5では約半数以上の企業が4回以上同じ評価を獲得するなど、上位・下位の評価層では評価が比較的安定していることがわかります。一方で評価3・4・6の層では6ヶ月前の評価が分散し、市場評価が相対的に流動的であることが分かります。

以上から、IR活動を通じた市場評価の改善は現状では一部の企業にとどまり、全体としては評価が変化や期間の上で安定的である事が分かりました。これは下位評価企業が低評価に停滞し易い事、改善が望まれる下位評価企業の評価改善が限られる事を示します。また一方で、上位評価企業が評価下落に見舞われる事も珍しく無く、それぞれの立場で評価改善への困難が存在する事が分かりました。
現在一般的な手法による評価改善では、このような状況への対応が困難である事から、可視化と定量的な指標を用いた改善サイクルの導入が、IR活動の実効性向上に必要と思われます。現状把握と戦略的対応を通じて、市場からの評価向上を目指す取り組みが今後ますます重要になるでしょう。