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株価は如何にして破壊されたかーペッパーフードサービス社の事例


ペッパーフードサービス(3053)の株価が大きく下落しました。終値で直近高値の1,697円から4月3日に371円の安値を付けた後、現在は400円台で取引されている様です。現下の株式市場の低迷とウィルス感染防止に向けた、外出自粛による外食産業の業績懸念が、この株価低迷の要因である事は想像に難くありません。またそれに加え、昨年末に発表され今年年初より実施される、新株予約権による資本調達の影響もありそうです。


この資本調達では、当時の発行済み株式数の24.65%に相当する520万株分の新株予約権を発行し3年間で行使させる事で、概算で69億円の調達を目指しました。また新株予約権の行使価格は下方修正が可能となっており、当初は1,332円に設定され株価下落と共に666円まで修正される事となっています。昨年12月27日に発表され、今年1月15日に引き受け会社に割当が行われ、翌日から権利行使が開始されましたが、株価下落の為権利行使は2月末に停止している様です。(図1)




株価の推移を見ますと、12月27日までは緩やかな下落傾向にありましたが、それ以降おおよそ一定の割合で下落し、2月26日の決算説明会以降、より大きな下落率で株価が推移した事がわかります。この状況は以下の様に整理出来ます。

  1. 新株予約権の発行数量の大きさに市場が拒否反応を示し、12月27日以降のトレンドを決定した。(図2)

  2. 権利行使が報告された2月末までの間、株式売却数の出来高に対する割合は期間平均で20.73%と抑制され、権利行使開始前後の価格下落率に大きな変化はない事から、権利行使が株価下落を加速させた懸念は少ないと思われる。

  3. 決算説明会直後に出来高を伴い大きく株価が下落し、またその後の下落度合いを強めた事から、決算説明会が一つの転機だったと思われる。



環境要因のみならず、市場の動揺と失望を誘い株価下落傾向を決定してしまった事が、大きな株価下落を招いた様です。2月末までに4割程度の予約権の権利行使を行い、17億円弱の資本調達が行われた様ですが、12月27日から2月末までに株価がほぼ半減し、時価総額で142億円弱を失うなど大きな代償を伴った様です。この例は新株予約権による資本調達の際に、以下の示唆を与えると思われます。

  1. 市場への影響を考慮の上での調達額設定の必要性

  2. 新株予約権による資金調達の機動性を活かす為の商品設計と適合性判断の必要性

  3. 市場への説明強化の必要性


(データ出所:会社開示情報等)


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