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東京証券取引所によるIR体制整備義務化

  • htsujii
  • 5月7日
  • 読了時間: 3分

東京証券取引所より、上場企業のIR体制整備を義務化に関するリリースがありました。同取引所は上場企業に積極的な投資家への情報開示を通じた投資行動の活性化を促したい意向と思われ、早くも今年7月から実施との事です。ただし実施に当たり、一律の形式基準の準拠を求めず、企業個別事情に基づく判断を許容する様です。各社で異なる上場意義や株主の要請、対応能力に照らし妥当な指針ですが、上場企業はIR活動で何を目指すか、その為に必要な改善は何かといった点につき、現状を見直す事が促された様に思われます。

 

各社のIR活動への取り組みについて、全国株懇連合会の調査結果から、現状の一部を概観したいと思います。このアンケート調査は、同連合会の会員企業に対し毎年実施され、その内容は株主総会や取締役会構成などIR活動以外の内容も含みますが、ここではIR活動のうち、投資家への情報開示に関する質問回答のみを抜粋します。

 

図1は同調査の回答企業の上場市場分布を示します。外円が同調査の回答企業、内円は上場企業全体の分布です。回答企業はプライム上場企業が全回答数(1,553)の約6割を占め、残りスタンダード上場企業が3割強という事で、ある程度上場歴の長い企業が中心です。従って一定のIR活動の体制整備が完了し活動履歴がある事が期待されます。またプライム上場企業が多い事から、機関投資家対応と個人投資家対応の双方に向けたIR活動が行われている事も期待される回答母集団と思われます。(市場別上場企業数は、各市場の単独上場企業数の合算値。名古屋証券取引所は2025/5/7現在、その他市場は2024/12/31現在。)


回答企業の上場市場分布

図2のIR活動内容に見られる様に、ホームページの開設は大半の企業で行われ、おそらくホームページのコンテンツとして、開示資料の配布が行われていると思われます。しかし資料共有以上の対応に大きな差異があります。機関投資家及びアナリストへの対応は、アナリストの取材対応が5割強と高水準ですが、機関投資家・アナリスト向け説明会はやや低く、受動的な取材対応は行えても、能動的な会社説明会の実施は出来ていない、といった企業間の取り組み差異を示唆する様に思われます。また個人向けの会社説明会の実施比率は2割に留まり、株式保合解消が進展する環境下、個人株主の獲得は多くの企業で努力目標である事を考慮すると、要改善である様に思われます。 (同調査結果は2024年10月公表。)


IR活動内容

IR活動の担当配置も各社で対応が分かれます。図3は回答企業のIR活動担当部署の分布を示しており、専門部署による対応は一部企業に留まる様です。多くの企業で、IR以外の機能類似性と負荷を勘案し決定した様ですが、IR活動が何を目指しどの様な活動をどの水準で行う必要があるか、解釈理解の差異が背景にある様に思われます。多数の上場企業からIR活動の実施により、自社株式に投資価値を認め資本を投じさせるという目的を考慮すると、各社の本業での製品・サービスのマーケティング並みの熱量で取り組む必要があります。現対応がその期待に応えうるか、改めて考察すべき企業が少なくない様に思われます。


IR活動担当部署回答構成比

© 2020 Yusoku Advisor Godo Kaisha

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