課題認識
企業の継続的な成長を実現する上で事業戦略と資本政策は、上場・未上場を問わず企業経営における重要事項である事は、多くの論を待ちません。企業買収や戦略施策投資の原資調達、自社への敵対的買収への防御、または幹部への報酬提供手段として、妥当な範囲で十分に高い自社価値評価を獲得する事の重要性は、昨今の株主アクティビズムの隆盛に鑑みて明らかです。しかし事業とは異なる利害関係者を惹きつけ、自社への投資呼びかける、といった取り組みの充実について資本市場の賞賛に浴する企業は、それほど多くは無い様です。
資本市場から企業は、従前の取り組みである情報開示の充実に加え、企業統治の透明性、株主還元や社会的貢献の強化など、多くの取り組み・改善を求められています。更に企業が望む「妥当な評価」を得る為には、積極的なアピールや投資家との対話といった取り組みが必要とされます。多くの上場企業が純資産簿価に満たない市場株価評価に不満を持つ一方、高評価企業へ投資資金が集中する事から、戦略的な取り組みにより投資家を惹きつける事に成功した企業は、一部に限られると思われます。事が予想されます。
方策案
企業価値評価の決定は資本市場の手に委ねざるを得ませんが、市場環境や参加者属性・状況を理解し、情報やメッセージの伝わり方を工夫する事は、企業が当事者として取り組み得ます。自社製品・サービスのマーケティングと同様に、投資家に対する「自社」アピールの工夫が功を奏する可能性が存在します。
ただし資本市場における競合企業数は事業市場に比べ遥かに多く、また投資家の投資選好は集中し資本は傾斜配分される事から、「パレートの法則」(所謂「2:8の法則」)が働き、一部の競争勝者の陰で多くの敗者が存在します。劇的な競争環境に処する為、企業は自らの立ち位置を明確にし、アピールを狙う投資家を具体的にターゲティングする、といった戦略的なアプローチが必要となります。
こうした投資家マーケティング活動は、現在主にインベスターリレーション、またはその英語略称であるIR(アイ・アール)活動と呼ばれ、企業内でも広報(英語略称でPR)との並行的な取り扱いが多い様です。しかし資本市場では、企業評価を機関投資家に代表される専門家や、取引市場の価格決定メカニズムを通じた「集合知」が決定する事から、表層的「アピール」は有効でなく、本質を見透かすと考えられています。現実感の無い飛躍的成長計画、実現見込みが薄い変革、認知度向上による評価改善、継続困難な配当や自社株買いなどは、一時的効果以上は望めない様です。
一方でこの事は、投資家の評価・意見の経営への反映が、市場評価改善に繋がり得る事も示唆します。企業が投資家マーケティングにより資本市場評価を得ようとするならば、資本市場(投資家)の評価意見を吟味の上で経営に反映する意向・意欲と、聞くべき投資家と意見を見分ける能力を有すべきである事を意味します。こうした経営活動を支える、「情報発信ではなく双方向的な対話」「担当部署完結でなく社内横断的巻き込み・連携」「資料作成・渉外担当でなく経営示唆収集と戦略推進」機能の構築と運営実現が必要と考えられます。
ご提案
弊社では上記の問題意識に基づき、投資家マーケティング戦略立案と施策導入支援を受託しております。
新たな貴社株式投資家の獲得に向けた、投資家ターゲティング、成長ストーリーの再構成など、投資家マーケティングの各種施策の定義と導入計画・実施支援により、戦略的なマーケティング活動を立ち上げ、以降継続的に見直し改善を進める事で、貴社株式への既存・新規投資家へのアピールを強化し、投資家基盤の強化と市場評価の改善をご支援いたします。