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スタートアップでも「亀の甲より年の功」

 成功するベンチャー企業の創業者の平均年齢は、20代や30代前半ではなく45歳だった、との調査結果が以前バーバード・ビジネス・レビュー誌に、掲載された事がありました。(「起業家として成功したいなら若いうちに挑戦すべきという思い込み」、2018年8月30日、ハーバード・ビジネス・レビュー日本語翻訳版リンク及び英語版リンクを参照。)


 米国のスタートアップ企業の記事を特集する、「Inc」誌が2015年に発表した「米国で最も急成長中のスタートアップの創業者たち」では、創業時の平均年齢は29歳であった事、また有名なベンチャーインキュベーターであるYコンビネーターの共同創業者は、「出資相手の足切りラインは32歳」との見解を示すなど、メディアを通じた起業活動の印象は、30代前半までの人材による取り組みとの印象を抱き勝ちです。


 しかし上記記事の著者である、米国ノースウェスタン大学のベンジャミン・ジョーンズ教授らが2018年に行なった、国勢調査その他の統計データによる分析("Age and High-Growth Entrepreneurship, American Economic Review: Insights", Benjamin F. Jones et al., 2019)では、起業家の創業時の平均年齢は42歳であり、この傾向は若年者が活躍しそうなハイテク産業や、シリコンバレー地区に調査対象を限定しても、同様に40代前半という結果を示し、更にはエネルギー産業やバイオテクノロジー産業では、平均年齢はより高い47歳近い結果となりました。(図1参照)



 調査対象を従業員数の増加や、IPOまたは株式売却の実現といった指標による成功度で分類した、上位0.1%のスタートアップ企業でも同様の結果だった事に加え、創業者の年齢が高い程スタートアップの成功確率が高まる事まで示されました。


 この記事は上記範囲でも十分に興味深いのですが、恐らく紙幅の都合で、もう一つ興味深い分析結果について、極簡単に触れるだけに留められています。それは、「ふさわしい経験を持たない創業者に比べて、立ち上げるスタートアップと同じ業界で最低3年の経験を持つ創業者は、起業で大成功する可能性が85%も高くなる」との結果についてです。


 この記事の原典である、ジョーンズ教授らによる論文では、上記の創業者年齢分布に加え、創業者の起業前に於ける、該当または類似業種における勤務年数と、創業企業の業績についても分析を行い、最低3年の経験を有す創業者は未経験の創業者に比べ高い確率で成功している事を指摘しています。(図2参照)




 経験値は少ないが既成概念に囚われず、エネルギッシュに事業化に取り組める30歳前後の創業者と、起業した事業・業界での経験知識や人脈を有す40代の創業者では、後者がより高い確度で起業に成功するという結論は、起業活動を縁遠く感じる壮年世代には、認識を新たにする好材料では無いでしょうか?

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