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経済動向に依らず必要な事業改革

 年も改まりまして、今年の経済や金融市場の先行きを占う記事や討論を目にする事が多くなりました。これまで同様今年も、不確定要因が多く先行きの見通しが困難な事から、上場企業株価は、PERやPBRといった評価倍率の水準修正が既に完了し、経済環境変化に伴う業績水準の修正が、次の焦点として注目される様です。

 物価や金利の上昇、サプライチェーンの混乱による製造・物流の遅滞、地政学的影響など、企業業績への影響は今後次第に判明しますが、多くの上場企業が決算発表時に公表する来期業績予想から、現在把握可能な経営課題を明らかにする事は有益と思われます。


 企業が事業活動実施に必要とした、借入金及び株主資本を総称して投下資本と呼びますが、この投下資本には一定の調達費用が存在する事から、各社の企業価値創出力は、投下資本より得られた利潤と調達費用の「差額」により決定される、と考える事が出来ます。この「差額」は経済的付加価値(エコノミック・バリュー・アデッド、略称EVA。米Stern Value Management社登録商標)と称されます。

 上場各社の2023年度業績予想に基づき、EVAの投下資本に対する利回りを業種別にプロットした図を以下に示します。(図1参照)



 卸、金融、REIT、ETFを除く東京証券取引所全上場銘柄の内、会社業績予想を公表する企業3,202社を対象に、172の業種分類毎に株式時価総額加重平均したEVA利回りを縦軸とし、また業種分類に含まれる個社別EVA利回りの標準偏差を横軸としてあります。

 EVA利回り平均が負の値となる業種、及び「利回りのばらつき(標準偏差が大きい)」が大きな業種内の業績劣後が予想される企業で、状況改善に取り組む必要がありそうです。


 負の業種平均EVA利回り業種(サービス業)に付き、対象企業の分布を以下に示します。(図2参照)縦軸は図1同様にEVA利回りであり、横軸は対象業種に属する企業毎の株式時価総額を指数化して表示しています。なおこの業種の時価総額加重平均EVA利回りは-2.93%、対象企業の標準偏差は2.07%です。



 正のEVA利回りを示す企業も少なからず存在する一方で、負の利回りに留まる企業が多く存在します。負の利回りは時価総額の大きさによらず見られますので、よほど小さな企業でもない限り、規模の拡大が利回り改善に繋がる様でも無さそうです。

 また、必要な利回りの改善幅は2,3%ですが、各社の投下資本の大きさと市場競争を考慮すると、大きな改善効果を期する大胆な取り組みが必要と予想されます。

 特に業種全体で投下資本利回りが低迷する場合は、既存事業の高付加価値化か、新たな業績の柱となり得る、新規事業の構築、獲得の取り組みが不可欠であると思われます。


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