東京証券取引所の新市場区分移行に向けて

 東京証券取引所における新市場区分制度への移行プロセスが開始され、同取引所による新区分に基づく適合状況の1次判定基準を満たさない旨の通知を受けた企業が664社に上るとのことでした。この通知は6月末時点のデータに基づき判定を行い7月に実施されており、その後各社は新市場区分の選択申請手続きを今年12月までに行い、その結果が来年1月11日に公表されることとなっており、各社の上場市場選択と選択市場における基準充足に向けた対応が注目されます。


 新区分のうち最も注目されるプライム区分では、ESG開示の強化など企業に変革や成長を促し海外の投資資金を呼び込む事を期待し、従来の1部上場より高度な基準が適用される事とされ、1次判定で基準を満たさなかった企業については、「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を12月末に提出し、経過措置としての緩和上場維持基準の適応をうけ、以降事業年度毎に計画の進捗状況の開示を行う事になります。

(参照:「市場区分見直しの概要」日本証券取引所グループ


 プライム市場区分の上場基準概要では、流通株式時価総額、売買代金などによる「流動性」評価、流通株式比率による「ガバナンス」評価、売上高・利益・純資産額・時価総額など「経営成績・財政状況」評価による基準が示されています。財務指標や株主数など複数指標で判定が行われる様ですが、流通株式時価総額が主たる判断基準と言えそうです。そこで、同じく流通株式時価総額に基づき、東証1部上場銘柄で構成されるTOPIX指数の、構成銘柄別構成ウェイト(以下、ウェイト)の分布を確認した結果が、以下の図1です。



 使用データは令和3年8月末時点で、1部上場銘柄数は2,187銘柄でした。上記の1次判定の時期と多少ずれますが、TOPIX指数の99%となる累計ウェイトが、1,467銘柄で得られる事から、1次判定で抽出された664銘柄は、1部市場における流動性と市場価格形成における重要度が相対的に低い銘柄である事が分かります。更に以下の図2では、全業種でウェイトの上位1,500社とそれ以外に順位付けを行った後に産業別分類を行いました。(1,500位以上の銘柄合計が1,522となる理由は、複数の同順位銘柄が存在する為です。)



 産業分類毎に上位1,500位に属する銘柄の最小ウェイト(列③)に対し、1,501位以下に属する銘柄の最大ウェイト(⑤)の対比を⑥に示しましたが、4%から8%程度の差しかない建設業・化学産業等と、より大きなウェイト差がみられた医薬品や繊維製品産業等では、1次判定の受け止め方が異なる事が予想出来ます。一方で1,501位以下銘柄のウェイト平均(⑦)と③の対比(⑧)では、上位と下位の銘柄での差が大きい事が見て取れ、相対的に重要性の低い銘柄の選別として機能している事が分かります。


 この分析は、東証が1次判定で不適合と判定した銘柄と整合を確認しておらず、個々の銘柄にはズレがあると思われますが、概ね全体的な傾向を示していると仮定すると、図2の列⑥の値が100%近傍となり、僅差で1次判定不適合とされた企業や産業分類では特に、プライム基準充足に向けた計画作成が鋭意進められていると思われます。

いずれの産業分類も銘柄数が多く、投資資金の獲得を巡る競争も激しいと思われますが、これら企業の奮起に期待したいものです。