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未公開株式投資公募ファンドの発売

先日、野村アセットマネジメントが「野村日本新鋭成長株ファンド」として、未公開株式を運用資産に一部組み込む公募投資信託を発売する事を発表しました。中長期に渡り成長性が見込まれる新興企業への投資を目的に、90-95%は上場後10年未満の株式を中心に組み入れ、残りをジャフコ(8595)の運用する、未公開株投資ファンド持分、または未上場株式を組み入れるとの事です。この様な未公開株式投資公募ファンドは初の試みとの事で、未公開株式投資をリテール投資家に広げる新たな手法として興味深く、また上記のリリース文の公開が8/2、投資目論見書の公開が8/5と、市場環境が大きく変化する中での船出となった点でも、大変果敢な取り組みになった印象です。


目論見書では、未公開株式にも投資可能としつつも、当面はジャフコの運用する未公開株投資ファンド持分(LPS)へ投資するとあります。対象LPSはSV6とSV7との事ですが、目論見書では概要のみ記載に限られます。これらの現状は、ジャフコの25年3月期第一四半期決算説明会資料(p.32)に記載されています。どちらも10年満期のファンドで、SV6は2019年設立で「EXIT」中、SV7は2022年設立で「投資期間中」とされ、ジャフコにとっては、公募投信は自社持分(292億円、220億円)の「売却先」という捉え方になります。また個別の未公開株への選択的な投資では無く、ファンド持分単位で購入ですので、玉石混交のポートフォリオを購入する事になります。


グロース市場の月次推移

図1にグロース市場の推移を示します。赤い四角は8/5の指数終値と時価総額概算を表します。IPO件数の増加はグロース250指数の上昇に伴い実現しましたが、時価総額の伸び程には指数が伸びておらず、残念ながらグロース市場株式への投資は全般的に報われ難い傾向の様です。また直近の市場環境変化の中、指数水準は下落傾向に転じており、IPO件数の維持は難しいと思われます。未公開株式のIPOによる売却は、期近では実現が難しい印象は否めません。未公開株式保有のメリット享受は、長期的な保有が前提となる様です。


時価純資産と時価総額の比較

上の公募投信の新規性は未公開株式の保有にあり、ジャフコの保有LPSの購入が予定されていますが、ジャフコ株式は未公開株式の代替証券と見做す事も出来ます。

図2では、直近期の同社バランスシートに投資資産の時価評価を反映し、時価ベース*での純資産額を算出しています。8/5終値での時価総額は、時価純資産額の0.58倍 (=980/1689)である事から、ジャフコ社の株式購入により投資家は、LPSの時価購入に比べ、割安に未公開株式ポートフォリオを得られます。SV6, SV7以外のLPSとオンバランスの現金も含む点で違いは生じますが、価格の安さと流動性の高さは大きな魅力です。

(*: 公正価値評価、引き当て前)


未公開株式のIPO期待が売りの商品だと思いますが、期近にはメリット実現が難しく、またジャフコ株が割安に購入可能な事を考えると、その魅力は話題性に留まる印象です。




© 2020 Yusoku Advisor Godo Kaisha

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