日本企業のベンチャー投資に関する調査研究

日本企業のベンチャー投資の状況調査(「我が国のコーポレートベンチャリング・ディベロップメントに関する調査研究」)が経済産業省より昨年7月に発表されています。国内企業と海外企業のアンケート回答の対比による示唆に富んだ調査かと思います。詳しくは経済産業省のホームページより原典をご覧頂ければと思いますが、いくつか興味深い点をご紹介したいと思います。(データ出所は原典)

コーポレートベンチャーキャピタル(以下CVC)の運営目的について、日本企業は「ビジネスモデルの革新」を最重要視し、続いて「技術の革新」「市場の理解」「金銭的リターン」を目標として掲げ運営されている点。自社のビジネスモデルの変革を出資先に託したかの様に聞こえる点に違和感はありますが、ここは「現状打破」の問題意識の強さが、CVC設立・運営の大きな動機、と解釈すべきかと思われます。一方「金銭的リターン」の優先度がそれほど高く無い点は、目的設定として収益重視の事業投資では無く、事業開発や情報収集という意味合いが強い、という意味合いかと思われます。




投資ポートフォリオの内部収益率が、当調査で挙げられたグローバル企業の回答に比べ低水準に留まる点。先に挙げたCVCの運営目的が事業開発と情報収集だとすると、単なる支出より見返りが得られるだけマシ、という解釈も可能ですが、CVC活動に従事する人員費用を加味した時の収支や、自社の資本コストとの見合い、企業業績への影響を考慮した場合、果たしてCVC活動が持続可能であるか、という点においてはやや心配な印象もあります。投資収支によりシビアであろうと思われる、グローバル企業との格差(回答の中央値が日本企業で3−5%である事に対し、グローバル企業では11−20%である事)は、意識せざるを得ないと思われます。




出資先への支援手法が、事業の側面支援的な範囲に傾斜している様に思われる点。下のグラフでは左側から右側に掛けて、より事業運営に積極的に関与する支援内容で並んでおり、「提携先や・サプライヤー・顧客ネットワークを紹介」が最も回答数の多い手法となっています。支援手法は、出資比率や出資先との関係・事業上の関連性を考慮して選択される為、一概にグラフ右側の手法が望ましいとは言えませんが、「紹介に止める」とする判断が妥当な、現場状況がある物と思われます。この辺りは投資目的、目指す投資成果、採用する投資・支援手法の選択との兼ね合いがあるでしょうから、仮にCVCの運営について見直す考えがある場合、CVCの運営方針にまで切り込んだ議論が必要になろうと思われます。