投資家マーケティングの効果を“見える化”する:定量評価例の紹介
- htsujii
- 6月24日
- 読了時間: 3分
日本の多くの上場企業が年次株主総会を迎える6月ですが、近年株式の持ち合い解消が進み、個人・法人を問わず投資家獲得が重要課題となる中、投資家アピールに対する成果認識は、当事者にとって一層重要な関心事項であると思われます。
前回のブログでも触れたように、弊社では投資家マーケティング活動の成果を定量的に評価することは、上場企業における自社株の価格形成や流動性向上に資するものと考えています。ただし、市場動向すべてを読み解くことは、入手可能なデータが限られる事を鑑みても現実的ではなく、特定目的に限定したツールを開発・活用することが現実的です。今回は、その評価手法の一例をご紹介します。
想定シナリオとして、IR担当者が本年5月の1か月間における自社株のパフォーマンスを、同業他社と比較したい場合を考えます。一般的には、業種や市場区分、時価総額などの条件で比較対象を選び、株価および売買数量の動向を調べ、図1のような散布図を作成して相対的な動きを把握すると思われます。

図1のような散布図からも、自社と他社の動向の差異について一定の示唆は得られますが、その背景や意味合いについての解釈は難しいのが実情です。一方、弊社が開発した手法では、図2のように、各銘柄の動向を複数の客観的な指標に基づいて区分し、図1では見えにくかった関係性(相対的な市場評価上の位置付け)を明らかにすることが可能です。(図2では縦横に重複するプロットが存在することから、単なる価格変動率や売買代金回転率による区分では無いことが、お分かり頂けると思います。)

図3は、図2の区分に基づいた各銘柄の1か月間の終値推移を示したもので、各社の相対的な位置付けを加味した株価推移の可視化が可能です。これにより、市場における同業企業間の相対的な株式評価を明確に把握できます。

また図4では、各区分に属する銘柄ごとに、評価指標1、2、3に基づくスコアを示しています。同一区分に分類されていても、個別指標には大きな差があり、企業ごとに異なる改善アプローチが必要であることがわかります。

このような分析を通じて、IR担当者は自社株の相対的位置づけや、市場動向と各指標の関連性を把握したうえで、改善余地に応じた施策を検討・実行できます。その後も定期的(月次など)に結果を定量的に追跡し、さらなる改善へとつなげるPDCAサイクルを構築することが可能になります。
弊社では、この手法を「効果の見える化」による施策効果の測定だけでなく、市場の反応を可視化し、企業にとって必要な対応を把握するためのツールとして提供しています。株式市場における自社評価の改善を目指す企業にとって、有効な支援手段となると考えています。