株式指数水準も最高値を更新するなど、今年に入り株式市況好調がメディアでしばし報じられる様になりました。AIブームに牽引された米国株式市場の好況や、日本株式への海外投資家による持ち高増加意向が大きく影響している様ですが、新nisaの課税優遇制度の導入による個人投資家の動向変化も興味深いところです。
証券保管振替機構の統計情報ページのデータを使い、直近10年の上昇過程における個人投資家の動向を以下に見てゆきたいと思います。
同データでは株主は個人情報に基づき「名寄せ」され、同一人物の複数銘柄保有による重複認識が消去される事で、実在の株主数が示されます。株主数は2024年2月末時点で1,500万人となり、2014年6月末に比べ、12.3%増加した様です。保有金額は143兆円と76.8%増加し、株主当りの保有金額は949万円と57.5%増加した様です。
図1は年齢階層別株主数の2014年から2024年の間の変化を示します。2024年の株主数(青色部)は、2014年からの移行株主(赤色部)と、新規株主(緑色部)から構成されます。株主数は30歳から40歳で最も増加し、70歳以上では減少に転じます。各年齢階層の収入水準傾向や資産状況から、個人投資家の株式市場への参入と退出の合理的な時期と思われます。株主の年齢構成は、60歳以上の株主が全株主の43.3%を占め、現在の株主年齢の中央値は60歳から70歳の間です。
図2では年齢階層別の株主当りの株式保有額を示します。40歳以上とそれ以下の年代間で保有金額が大きく異なりますが、これは年代毎の投資余力の差に加え、2014年当時から株式投資を行ってきた株主比率の高さも影響している様です。図1から過去10年の株価上昇の恩恵を受けた株主は、40歳以上の年齢層が中心であると考えられ、図2でも40歳以上で2014年と2024年の株式保有金額の差額が大きい要因であると思われます。
図3は年齢階層別の株式保有金額割合の推移を示します。およそ10年間で60歳以上が60%以上を保有する構図は変わらず、僅かながら高齢層への保有額集中度はむしろ高まっている様です。図1から新たな株主の多くは60歳未満ですが、図2にある様に、直近の株価上昇の恩恵を得た株主は、株式投資歴の長い年長者に傾斜する様です。その結果、高齢の株主へ保有金額の集中が進む、という整理になる様です。
株式市況の活況と新規株主の増加の一方、株式投資の大半を投資判断の上で比較的保守的と言われる、60歳以上の株主に依存する状況は継続する為、個人投資家動向は従来から大きく変化する事は無さそうです。業種・事業特性から、個人投資家依存の株主構成を有す企業では、投資家獲得を考える上での一つの観点となるでしょう。