企業の市場評価は変えられるか?6か月間の株価と指標の関係分析
- htsujii
- 6月30日
- 読了時間: 3分
前回のブログでは、当社が開発した分析手法による定量評価の概要をご紹介しました。これまで把握が難しかった市場動向からの示唆を得られる点において、投資家マーケティングの取り組みに役立つ有効なツールであることをご理解いただけたかと思います。
今回はこの手法がどのように役立つのかをより具体的にイメージしていただくため、過去6か月間の株価推移を対象とした実際の分析事例をご紹介します。
分析対象は、東京証券取引所に上場する普通株式のうち、セクター・流動性・データ取得の観点から選定した1,735銘柄です。図1はこれらの銘柄における6か月間の株価変動率の分布を示しています。比較的短い期間でありながら、企業ごとの価格変動の差は非常に大きく興味深いデータですが、自社株評価とマーケティング改善への示唆は限定的です。

当社の分析手法では、単なる価格変動にとどまらず、株式ごとの市場評価を複数の指標で分解し、(前回ブログの)図2や図4のように、自社株の相対的な位置付けや市場評価の改善余地を可視化します。前回の記事では、これらの評価指標に基づき、具体的な改善施策が検討可能となることをご紹介しました。今回は、実際の市場評価の向上可能性を検証します。
図2では、「月末評価」と「月次評価」という2種類の指標の関係性を示しています。当社の手法では、この2つの指標を用いて、自社株の市場内でのポジション変化を継続的に追跡します。図2の横軸は過去6か月間の月末評価の変化率を、縦軸はそれぞれの月末評価グループに属する銘柄の月次評価の平均値を示しています。その結果、月末評価が向上したグループほど、月次評価においても一貫して(小さな数値で表される)高評価を獲得している傾向が見られました。これは、継続的な月次評価の改善が、市場全体からの評価向上につながることを示唆します。

図3ではこの傾向と株価の関係を検証しました。この3次元グラフでは、奥行き方向に月次評価の6か月平均値、横方向に評価期間の初期時点での月末評価、縦方向に株価変化率(100%を基準)を示しています。結果として、月次評価が高い銘柄ほど株価上昇率が高く、かつその傾向は期初の評価水準に関わらず一様であることが確認されました。すなわち、現在の市場評価が高くなくても、月次評価の継続的な向上が株価上昇に結びつく可能性があるということです。

このように、本分析手法は、株価や売買動向だけでは把握できなかった市場における株式評価の構造と改善余地を可視化することを可能にし、投資家マーケティングの取り組みにおいて定量的な意思決定を支援します。「雲をつかむような感覚」だった施策の効果把握に対し、継続的にモニタリング可能なPDCAサイクルの構築を支援するツールとしてご活用いただけます。